完訳ファーブル昆虫記 完訳ファーブル昆虫記

本書の特徴

読みやすい!

本書は仏文学者であり、少年時代から昆虫収集を趣味としてきた奥本大三郎氏の「個人完訳」で世界初の偉業と言えます。虫の姿や行動など、実物を知らないと訳せない微妙な部分が「美しい日本語」として再現。10巻20冊のさまざまなシーンに出てくる昆虫やエピソードが矛盾なく、すっきり整理されています。

見て楽しい!

巻頭にはカラー口絵で昆虫や関連の内容を紹介。さらに各章・各頁には詳細なイラストと脚注をつけ、本文の内容を補足しました。イラストは実物の標本をもとに細密に描き起こしたもので、『昆虫記』の昆虫がすべて正確に図示されるのも世界でも初めてのことです。集英社版は、原本を超えて『昆虫記』の理解を深めます。

解説が新しい!

各章末には訳注をつけ、ファーブル以降に新たに分かった最新の情報を紹介。110年前の知識を再生産するのではなく、ファーブルのその先をも解説しています。また各章の扉裏には「あらすじ」を掲載し、知りたい内容に簡単にアクセスできるように工夫しました。221章を縦横に読みこなすことができます。

1分間でわかるファーブル昆虫記

完結にあたって

奥本大三郎
撮影/島袋智子

『昆虫記』の翻訳を思い立ったのは、いま考えてみると、小学六年生ごろのことになる。いや、そのころ感じたことは、翻訳を志すことに直結するというようなものではもちろんなかったが、先人の訳したものを読んでいて、「おや、この人は虫とはあまり縁のない人じゃないか。すくなくとも虫屋じゃないな」と思うことがときどきあったのである。

「虫屋」というのは「虫好きのアマチュア」というほどの意味である。それは虫に関する知識の有る無しではなくて、それを描写する際のちょっとした言葉づかいに含まれるようなもの、一種感覚的なもので、身に付く人には小学校低学年であっても身に付く。宗教家なら、信仰心とでも呼びたくなるようなものである。これまでの『昆虫記』の訳には、あえて言えば、それが無いような気がしていた。

 大学を出てフランス語の教師になったが、そこを辞めて、集英社の『ジュニア版ファーブル昆虫記』を書きはじめたのは、一九八九年のことである。私としては一大決心であった。二年でそれが完成して、今度は本格的に『完訳版ファーブル昆虫記』を進めることになった。

 それで子供のときの念願どおり、虫に関する用語や表現の点で、違和感のない、つまり、いわゆる欧文直訳体ではなく、朗読を聞いてよくわかる、すくなくとも聞き苦しくないような翻訳を目指すようになった。

 拙訳の『昆虫記』第1巻1章が初めて活字になったのは、一九八七年の月刊「すばる」五月号(集英社)であるから、この第10巻下刊行でちょうど三十年になる。私も古希はとっくに超えてしまった。少年老い易くどころの話ではない。完訳を成し遂げて嬉しいか、と聞かれれば、それがあんまり嬉しくない。『昆虫記』翻訳の日常が無くなって、会社を定年になった勤め人のような心境である。

奥本大三郎

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  • 虫の詩人・ファーブルが100年以上前に、約30年もかけて著わした自然科学書の古典『昆虫記』が、奥本大三郎の手によって現代によみがえりました。『完訳ファーブル昆虫記』は、自然に親しむ手引書として大人から子供まで楽しく読めます。

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    シリーズ単巻

  • 大自然の調和と不思議を描いた永遠の名作を生き生きとした文章と豊富な図版で子どもから大人まで楽しめるシリーズです。

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    シリーズ単巻

  • 本書は『ジュニア版ファーブル昆虫記』の章の構成を組み替え、6巻に文庫化したものです。ジュニア版にくらべてふり仮名が少なくなり、漫画、挿絵、脚注が多少減っています。また、口絵は入っておりません。各巻末には「昆虫とは何か」という書き下ろし解説ページがあります。カバーイラストは鳥山明氏。

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